0054 短気は損気、キレるのは損?

百汁百菜

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 ここ数年、いちいち何かにキレるのが面倒というか、しょうもないとおもいはじめた。怒りの力はマイナスなものばかりにおもえるが、怒りには場をコントロールする力があるし、自身の頭の回転も早くなるほか、強い衝動に駆られて普段なら起こせない行動にも出られる。これを有効に使えば逆境を跳ね返したり、社会にうねりを生み出して世に自分の意見を問うこともできるだろう。だが、短期的に「キレる」ようなものはたいてい怒りに自分自身が振り回されており、もはや怒りの感情に使われているような感さえある。そんな「キレる」ことは本当にしょうもないとおもっている。
 店員にキレているのを見るのは本当にしょうもない。自分も失敗する人間であることを棚に上げて、小さな失敗にいちいちイチャモンをつけているのを見るのは本当にしょうもない。本当にどうでもよい、すぐに修正の効くようなことにキレているのを見ると、その怒りのモチベーションはいったいどこから湧いてくるんだとおもえてくる。まさか「教育」してやろうなどとおもっているのではないか。そのようなキレ方をされても、受け取る側にとってはただの「理不尽」であって、「あのときに叱っていただいたおかげです!」なんてことにはならないだろう。こんなふうに、ただ互いに損をするだけなのだから、些細なことにキレる必要はないはずだが、そんな論理で感情を抑え込めるほど、人間は優れた生き物ではない。かくいう僕も昔は短気ですぐキレていた。今も短気といえば短気なのだが……。

 思春期は精神が不安定になってキレやすいものだが、僕はそれが終わって20代を迎えてもまだまだキレやすく、特に大学生のころは長い通学時間やバイトに追われていたこともあってか、輪をかけて短気であったとおもう。電車に乗り遅れて駅の柱を蹴り付けたり、事あるごとに舌打ちしたり……今振り返れば、顔から火が出るほど恥ずかしい。だが、ことあるごとにキレることができるのは、心の内に衝動力といえるようなものを飼っている証拠でもあり、それが行動力、活動力をもたらしていたはずである。そんな衝動力はできれば消さずに持っていたい。だが、いちいちキレてエネルギーを浪費するのはもったいないので、僕はできるだけキレない環境をつくろうと努めることにした。
 まずは時間に余裕を持つこと。これだけで随分と怒りが湧いてこなくなった。この余裕をもつことによって失ったもの(特に、社会的成功や地位)は大いにあるが、それを失ってでもストレスをかけないことによる恩恵は計り知れず、いちいち時間的制約にキレないことで自身の感情のコントロール感は随分と増した。今は電車に乗り遅れようがまったく腹が立たない。余った時間、そのへんをブラブラしてポケモンGOでもしていればいいのだ。
 また、他人に対しての一種の諦念を抱くことでキレずに済んでいる。怒りによって周りの人の行動を変えようだなんておもっていては、いたずらにエネルギーを損耗するだけである。他人は変えようとおもって変えられるものではない。そもそも自分が他人の言うことを全く聞かないではないか。なにか相手に不手際があっても、それを咎めるよりはさらりと流して円満な関係を維持するほうがよほどいい。

 思うに、僕がキレてしまうのは自分でコントロールできないものばかりがその対象であった。時間しかり、他人しかり、自分では何も変えられないものに対して無駄に怒ってエネルギーを損耗していたのだ。人が怒ってしまうのは何かを期待していて、それを裏切られたからである。だが、自分でコントロールできないものに期待をかけても、それが満たされることは少ないだろう。
 僕は会社員時代や餃子屋のアルバイトではよく怒られたものだが、そこで怒る上司や客は何らかの期待を僕にかけていたのだろう。そして、それを裏切られたから、怒る。「新人さんやから応援してあげようと思っていたのに!」なんて言われたこともある。こちらからすれば「そんなん知らんがな」である。いい大人がこんなことを言うのだから、人の期待癖はなかなか治らない。だが、裏切られてその度にキレていれば全く割に合っていないだろう。たまに期待通りの結果がもたらされたときの印象が強く残ってしまっているのである。こんなものギャンブルと同じではないか。しかも、かなり分の悪いギャンブルである。なので僕はそんなギャンブルから降りたのだ。

 普段は諦めを軸に心の平穏を保って、キレないように努めるが、いざという時にはキレないといけないときもある。とくに自分の尊厳が傷つけられたようなときは、その尊厳の回復を主張しなければならない。数年前、あるレシピ本を巡って大いにキレたことがあるが、キレないように努めていた僕でもまだこんなにキレることができるんだとある種関心したものである。そういうときのために力は温存しておくのがいい。普段からキレていたらいざという時に力が出ないし、「いつものことだ」とも思われかねない。「こいつはキレない」とおもわせておくぐらいが丁度いいのだ。

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今回の一汁一菜

2026/03/02分

モロヘイヤ・舞茸・にんじんの味噌汁
唐揚げ、カキフライ
大根の梅甘酢漬け
野沢菜漬け刻み

前日の残りがあったからか、かなり豪勢な食卓になった。

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