じゃがいもの増え方は奇っ怪である。
芽が出たいもを埋めておいたら葉っぱが出てきて、それが枯れ始めるころには、土の中にゴロゴロと増えたいもが転がっている。
じゃがいもはヨーロッパに16世紀に持ち込まれたが、その太り方や増殖のしかたを当初西洋人は気味悪がったという。食味が悪かったり、ソラニン毒が多かったり、というのもあるだろうが、何といっても聖書にじゃがいもの記述がなかったのが、西洋人の疑心暗鬼に拍車をかけたとかなんとか。(参考:『世界の野菜を旅する』玉村豊男 講談社現代新書 p50-55)
僕はじゃがいもを恐れてはいないし、改良が重ねられて美味しくなったじゃがいもは進んで食べたいと思っているが、確かにじゃがいもの増え方はよくわからない。ので、それを確かめようと思って今年の春は種芋を埋めておいた。


ナス科の葉を狙って飛んできたテントウムシダマシに多少荒らされたりもしたが、5月頃には可憐な花が咲き、6月頭、梅雨から逃げ切るように収穫。

地植えの分は多少虫に齧られたりしてしまったけど、概ね綺麗な肌ツヤ。これは皮付きでいただきたいところ。
また、深めのプランターでも少しだけ育てたものは、虫に食われることなく、綺麗なものが採れました。
結局、じゃがいもの増え方が分かったかと言われると、そりゃ袋なりダンボールに詰められたじゃがいもしか知らなかった頃に比べると分かったかもしれないけど、やっぱり謎ですね。
それより、食べましょう。そうしましょう。じゃがいもを華やかにしてくれる庭のハーブと共に。
セージと、いも。
セージの薬のようで甘くスッキリした香りに僕は毎度クラクラ来てしまい、その度に夢中になってしまうのですが、去年noteで書いたように、最初に植えたセージは虫に食い荒らされてしまってロクに味わうこともできませんでした。雪辱を果たすべく秋から植えたセージは地植えにしつつ、不織布で周囲をガード。虫が入ってこれないようにしました。
それが功を奏したのか、今年の春には大増殖で採りたい放題。ああ、こんなに嬉しいことはない。
セージといえば豚肉ですが、じゃがいもと合わせると淡白さに倦むことなく最後までいただけます。セージそのものも美味しく食べられるので、一緒に揚げてしまいましょう。
フライドポテト セージ風味

材料
・じゃがいも(男爵) ・・・食べたい分だけ
・セージ・・・食べたい分だけ
(フレッシュ・ドライどちらでも)
・油・・・小さいフライパンにじゃがいもが1/3〜半分浸かるぐらい
・塩・・・美味しいと思うぐらいかける
作り方
1.じゃがいもは皮付きのまま食べられそうならよく洗い、そうでないなら皮をむいて、一口大ぐらいに切る。
2.20cmぐらいの小さいフライパンにじゃがいもを入れ、油をじゃがいもが1/3〜半分ぐらい浸かるまで注ぎ、中火にかける。

ジュージュー揚がってきたら弱火にする。時々じゃがいもをひっくり返して全体が揚がるようにする。

3.竹串なり爪楊枝を刺してスッと通るようになったら、セージの葉を入れてさっと揚げる。

火を止めて網なりザルに上げて油を切り、塩を振って混ぜたら盛り付ける。

掘りたて、揚げたて、産地直送1分。どのポテトスナックの追随も許さない新鮮さ。
きれいな肌なのでやっぱり皮付き!歯ざわりサクッとしてるのに、もっちりとした中身。ねっとりと舌に甘みが絡みつきます。
塩すらいらないかもしれないぐらいで、撮影前に揚げたてを何個もつまみ食いしてしまいました。
パリッと揚がったセージもスナック感覚で旨く、もっと入れればよかったと後悔。フーッと鼻を抜ける香りは香ばしくも清涼感に溢れ、ほっこり甘いじゃがいもが引き立ちます。
パルメザンチーズでも散らそうかと思ったけどやめました。確かに旨いだろうけど、野暮というもの。ごまかし不要のおいしさです。
ローズマリーと、いも。
数年前、昔働いていたところのメンバー4人で、クリスマスディナーに出かけたとき、そこで供されたローズマリーの香りがついたフライドポテトへの評価は2分されました。
スパイスにもハーブにも慣れっこの2人がその味を支持し、残りの2人はよそ行きの風味をまとったいもによそよそしさを感じたのか、あまり手が伸びていませんでした。普段気安い関係であったいもが急におしゃれをしたものだから、戸惑ったのでしょう。
ローズマリーの風味がついたフライドポテト、僕は好きなんだけどなぁ。
ということで二品目はローズマリーとじゃがいもです。またフライドポテト……でもいいんだけど芸がないので豚肉と合わせます。
じゃがいもと豚肉の蒸し焼き ローズマリー風味

材料(2人分)
・じゃがいも・・・・・・・・食べたい分だけ
・豚ロース肉トンカツ用・・・2枚
・セージ・・・10枚ぐらい
(できればフレッシュ)
・塩・・・・・2つまみぐらい
・小麦粉・・・小さじ2〜
・ミニトマト・・・・3〜4個
・ローズマリー・・・2本ぐらい
(フレッシュ・ドライどちらでも)
・オリーブオイル・・・大さじ1ぐらい
・にんにく・・・・・・1片
・ブラックペッパー・・・好きなだけ
作り方
0.(前日準備)豚肉にセージの葉を貼り付けて冷蔵庫で一晩置く。

1.冷蔵庫から出して常温に戻したら、豚肉に貼り付けたセージをはがし、食べやすい大きさに切って塩、小麦粉をまぶす。

2.じゃがいもは一口大に切って600Wのレンジで3分ほどチンしたら、塩(分量外)を軽くまぶしておく。
ミニトマトはヘタを取って、包丁を1カ所刺しておく。

3.フライパン(僕は今回ストウブを使いました)に、にんにく、オリーブオイル、はがしたセージを入れて熱する。
セージがカリッとなったら取り出し、豚肉を焼く。


片面に軽く焼き目がついたらひっくり返し、じゃがいも、ローズマリーを入れて油と馴染ませる。
油が全体に馴染んだらミニトマトを入れて密閉できるフタをし、弱火で5分蒸し焼きにする。


4.ブラックペッパーを軽く振ったら、皿に盛り付けてもいいし、そのまま食卓へ運んでも。好みでトーストしたフランスパンを添える。

フタを開けるとローズマリーに悩殺されんばかりの豊潤な香り。パーティーなんかで食卓に持って行って開けると喝采間違いなしでしょう。
芋っぽさが一気に垢抜けるのがローズマリーマジック。よそ行きのドレスをまとったじゃがいもも、洒脱で良いものです。
豚の旨味とハーブの風味を湛えたオイルにフランスパンを浸すともう仰け反ってしまいます。これはぜひ用意していただきたい。
セージを貼り付けた上にローズマリーを纏わせたらさすがに豚の臭みもなく、ロース肉の醍醐味である淡白さと脂身の対比を存分に味わえます。
味付けは塩だけでも、ハーブがあれば、他の調味料はいらないんだとよくわかる一皿。
Ex.えごまと、こいも。
じゃがいもを育てたから分かることとしては、親指の先〜小指の先ぐらいの小さいいもがコロコロ採れるということ。商品の「じゃがいも」しか見たことなければ、一生気づきません。
そんなこいもはよく洗って丸ごと揚げちゃうのが吉。今年から育て始めたえごまが丁度いい具合に育ってきたので、一緒に炒めます。
じゃがいもと豚肉の甘辛炒め えごま入り

材料(1〜2人分)
・余りの小さいじゃがいも・・・2人で食べられるぐらい
小さいじゃがいもがなければ、普通のじゃがいもを一口大に
・豚こま切れ肉・・・100〜150g
・塩コショウ・・・・適当
・小麦粉・・・・・・適当
・えごまの葉・・・・5〜6枚ぐらい
【合わせ調味料】
・醤油・・・・大さじ1ぐらい
・酒・・・・・小さじ1.5ぐらい
・豆板醤・・・小さじ1ぐらい
・砂糖・・・・小さじ1弱
・炒め油・・・小さじ2〜大さじ1
・揚げ油・・・じゃがいもが1/3浸かるぐらい
・白ごま・・・適当
作り方
1.じゃがいもはよく洗って皮付きのまま冷たい油からじっくり揚げる。もしくはレンジで軽くチンしてから油で揚げ、串が通るぐらいになったら一度取り出す。
上の「フライドポテト セージ風味」を揚げた油を流用すれば経済的です。

2.豚こま切れ肉は塩コショウを振って小麦粉をまぶす。
フライパンに炒め油を熱して豚肉を炒め、焼き目がついたら1.のじゃがいもを入れてさらに炒め、【合わせ調味料】を入れる。


3.【合わせ調味料】の水気が飛んできて、全体によく絡んできたら、えごまの葉をちぎって入れ、サッと炒め合わせる。皿に盛り付け、ごまを振って完成。



小指の先ほどのいもを噛むとブチン!と弾ける旨さ。こたえられません。育てた人間だけの特権です。こんなのそう味わえるものじゃありません。
生だとちょーっとクセの強いえごまの葉も、炒めたらよく馴染み、プンとあと引くぐらいの香りとなって食が進みます。
おわりに

うまいけど、淡白で飽きがくるじゃがいもには、ハーブの衣装を着せるのが効果的です。普段フライドポテトの類は避けており、マクドでもセットを頼まないし、ファミレスなり居酒屋で「とりあえずフライドポテト」はやらないのですが、掘り立て産地直送1分の新鮮なじゃがいもとなれば話は別です。
3.5kg弱採れましたので、まだまだなくなりそうもないですが、ハーブがあれば完食街道まっしぐらです。それではまた。
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