どこかのバンドやグループに熱狂まではしなくとも、常に身の回りに音楽が鳴っていないと気が済まない。それはやはり、幼いころから車の中では、ラジオとその番組が流す音楽が絶えず鳴っていたからであろう。車の中は無音でも大丈夫という人もいるらしいが、僕はとても耐えられない。車内BGMは基本的にラジオで、お気に入りの局を聴取できるエリアを出てしまったら、スマホからBluetoothを通して音楽を流す。その土地で聴取できるラジオに回してもいいのだが、トークがメインのラジオ番組はあまり好みではないので、できれば音楽を流していたい。よっぽどのお喋り巧者、または声のいいパーソナリティだと話は別だが。
スマホでラジオを聴ける「radiko」を入れて、エリア外でも自由に聴取できるサービス、「エリアフリー」に登録すればいいのだろうけど、そこまでやったら「熱狂」まではいかなくとも、「熱中」の域である。そこまでは入れ込まず、でも、エリア内だったら必ず聴く。そんな距離感で付き合っているのが、「FM802」である(聴取可能エリアは大阪・奈良・滋賀の全域、京都・兵庫・和歌山の一部など)。
僕が音楽と出会うのは、ほとんどこのFM802を通してである。なにせ、前にも書いたように、音楽のサブスクには登録していないほか、tiktokに至っては、アプリをダウンロードしたことすらないから、音楽が流れてくる入り口はかなり狭い。たまたまテレビをつけたらやっていた歌番組で、「最近はこれがSNSで大バズり!」なんて言われてもピンとこない。ショート動画に切り取られる前提で作られた、山場がたくさんある曲、別の曲がくっついたかのような構成になっている曲、とにかくキラーワードを連打して一撃でその曲だと理解させるような曲が乱舞しているらしいが、僕はその埒外にいることが多い。なぜなら、FM802ではそのような曲がほとんど流れてこないからである。
FM802には、自社で音楽シーンを牽引するという自負があるのか、絶対に流れてこない曲というのが存在する。よく知られているのはビーイング系、元ジャニーズ系、その他アイドル系諸々……。その徹底ぶりはすさまじく、たとえば、シンガーソングライターのキタニタツヤひとりなら流れるが、元ジャニーズ系の中島健人とキタニが組んだらその曲は流れない。そのおかげ(?)で、歌番組で見るまでその二人が組んでいたことすら知らなかったぐらいである。
FM802の截然としたシャットアウトぶりによって、最近ショート動画などを賑わせているらしい曲に関しても、アイドル系の曲だったら、どのアイドルグループが、どの曲を歌っているかがわからない。でも全く困らないのは、中途半端さがないからである。最初から知らなければ、そこに思いを馳せることはない。
子どもの頃はこんなふうにシャットアウトされていることに気づいていなかったが、長じてから自分で車を運転するようになり、改めて自分の意志でFM802を流そうと選択したとき、そのことは強く意識されるようになった。でも、僕はFM802の姿勢に共鳴する。世の流れによって押し除けられてしまいそうな音楽をFM802は確かに掬い取っているとおもうからだ。
こうした音楽の好みについて「メディアによって操作されている!」というのであれば、それはあなたが聞いているラジオ局もテレビ局も、動画サイトも同じなのだから、それは言いっこなしである。僕はFM802の操作に満足しているから、これからも聴き続けようとおもっている。
ただ、そんな僕も、一時期FM802を切るときがあった。それは、1ヶ月の間、(おそらく)各番組中必ず1度はかけられる「ヘビーローテーション」の曲が、個人的に受け付けない曲だったときだ……その1ヶ月間は、邦楽ヘビーローテーションの曲が流れる度に、曲が終わるまでの4〜5分の間、ラジオをミュートにしていた。最近(2026年)はかなり減ったのだが、甘い男性ボーカルのラブソングが頻繁に流れていた時期があって、あのときだけは本当に辛かった。一般に言われるコロナ禍開けだっただろうか、雨後の筍のように若手バンドが登場してきた時期とも重なる。「back numberが好きで、ラブソングばっか歌ってます!」って言っていたバンドなんかもおり、僕は「そんなんでええんか」とおもったものである。案の定そのバンドの曲は流れてこなくなったが……。ファンの人がいたらごめんなさい。僕はもうラブソングが聴けない身体になってしまっている。
まあ、長い間聴いていれば(おそらく25年目ぐらいになる)そういうこともある。とはいえ、この「ヘビーローテーション」のバックナンバーを眺めてみると、今最前線で活躍しているアーティストを多数輩出しているし、今でも「こんなんどこから見つけてくるねん」っていうアーティストと出会えたら嬉しくなる。洋楽と邦楽、双方きっちり流してくれるのもポイントが高い。
FM802独自のヒットチャートにも洋楽が食い込んでくるということは頻繁に起こっており、僕が洋楽に触れるきっかけにもなっている。歌詞はよくわかっていない。いい感じの曲だなと思っていたら、「お前とのセックスは最高だ!」って言ってるだけの曲もある。でも、英語だと、日本語で言われるほどに直感的に響かないから洋楽のラブソングは聴いていられる。今僕のミュージックライブラリに入っている洋楽は、そんな風にFM802で聞いた覚えのある曲ばかりである。ブルーノ・マーズ、チャーリー・プース、エド・シーラン……etc。散々指摘されているだろうが、自分の耳でも、Official髭男ismがブルーノ・マーズの影響をバリバリ受けているのに気づいたりもして、俄然洋楽を聴く面白みが増してきている。
唯一FM802からではなく、本人の配信活動から直接聴くようになった音楽といえば、サカナクションである。『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』で(確か)ミュージックステーションに出ていた頃から知ってはいたが、格別の意識は向けていなかった。『新宝島』や『モス』も耳に入ってきていたし、好みだとはおもっていたが、それでもまだ格別の意識は向けていなかった。転機となったのは、2023年の後半、まだ『怪獣』ができていなかった頃に、山口一郎のYouTube配信を目にしたことである。そのときにバックに流れている曲にだんだんと惹かれていき、年越し歌唱配信で一気にやられてしまった。
とくにJ-POPには、聴くのに体力が必要だったり、少し構えないといけない曲というものがあるとおもっており、僕の場合、そこに米津玄師やOfficial髭男ismが入ってくるのだが、サカナクションの曲は、全く構えることなく、自分事のようにすっと世界観に入っていけた。多様な曲の振り幅があっても、すっかり入っていけるのだ。山口一郎が、「幕の内弁当のようになんでもあるけど、メインのお米がない」という趣旨の発言をしていたが、このときの「お米」とはラブソングである。ラブソングが聴けず、もうその世界に入っていけない僕にとって、直球のラブソングがないサカナクションは安心して聴くことができるし、サカナクションの内省的で、抽象的な世界観には、ぴたりとハマってしまう魅力があった。現在の最新曲『いらない』は、一見するとファム・ファタールにハマって身を滅ぼす男のような歌詞で、実際そのような筋でも読めるが、MVを見ると、それ以外の読み筋が出てきて、一気に深みが出てきた曲であった。いずれはライブにも行きたい。生まれてこのかたライブに行ったことがないが、初めてはサカナクションに捧げると決めている。
さて、問題はオールナイトニッポンのパーソナリティに山口一郎が就任したことである。いや、山口一郎の話はずっと聴いていられるから大丈夫なのだが、起きられるかどうか……。聴き逃しても大丈夫なように、radikoに課金するようになってしまうかもしれない。
関連百汁百菜
今回の一汁一菜

2026/02/11分
ナス・ほうれん草・油揚げの味噌汁
大根と京菜の漬物
鮭フレーク
珍しくナスがスーパーに並んでいたので。季節外れではあったけど、身の柔らかいナスでなかなか美味しかった。





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