カリーヴルストを食べたい
うんと寒くなって、街には鈴の音が聞こえ始めたこの頃、ふと「カリーヴルスト」ってやつを、食べたくなった。
水野仁輔さんの本、『幻の黒船カレーを追え』を読んで、海軍カレーでもインドカレーでも、また、家のカレーでもなんでもなく、カリーヴルストが食べたくなったのです。
カリーヴルストといえば、ドイツではどこでもサクッと食べられる大衆食とのこと。
ソーセージにケチャップベースのソースをかけ、上からカレー粉を振りかける。そしてそれをビールでグイっと流し込む。
カリーヴルストという響きがいい。喉を鳴らしながら声に出す「ヴ」の濁り感がいい。「ブ」ではこうはいかない。ハラヘリの意味でも喉が鳴る。
ソーセージを焼くかボイルするかして、ケチャップかけて、カレー粉振ったら終わり!と思っていたけど、『幻の黒船カレーを追え』によれば、そのケチャップソースに各店こだわっているとのことだから、ケチャップそのままだと芸がない。
ちょうど最近読んだ『あまから手帖』で、山田英季さんがカリーヴルストを作っていた。玉ねぎとにんにくやらとケチャップソースを炒め合わせていたのを見たから、なおさらそのままかけるわけにはいかない。
結局つぶしたにんにくを入れつつ、ケチャップとウスターソースのミックスでいきます。
ソーセージは切ることにしました。『幻の黒船カレー』で見たビジュアルがそうだった、というのもあるけど、なんだかソーセージそのままの姿だと、ハロウィンのフィンガークッキーみたいな不気味さがあって、切らずにいられなかった。肉汁流出対策委員会には怒られるかもしれないが……。
でも、切ったおかげで肉とにんにくの旨み溶け出したケチャップソースが甘旨!
カレー粉がビシーっと効いて、ついついビールに手が伸びます。
パラリと揉んで散らしたオレガノがあと引く余韻を残します。
潰したにんにくにかち合うと、もう猛烈に飲ませにくる味。
そして、じゃがいもがまとうセージの風味の、なんと佳きことか。
ほんの数枚入れるだけで、揚げたじゃがいもが清新な印象に一新され、芋臭さというか、土臭さが抜けて高級感を纏い始めます。なんというシンデレラストーリーか。
カリーヴルストの余ったソースはポテトにべっしょりつけてどうぞ。
ソースの中からセージの風味が後にスッと引き、次の一口を誘います。
あとになってもふと思い出す、セージの香り。すっかり記憶にこびりつきました。
カリーヴルストの材料
【材料(1~2人前)】
・ソーセージ・・・6本
・ケチャップ・・・・・大さじ1〜1.5ぐらい
・ウスターソース・・・ちょろっと
・にんにく・・・・・・大きめのものを1片
・油・・・・・・小さじ2~ぐらい?にんにくをじっくり加熱できるぐらい
・カレー粉・・・適当
・オレガノ・・・適当(ドライの葉を適当に揉んでかける)
〈ハーブ風味のフライドポテト〉
・じゃがいも・・・2個ぐらい
・セージやローズマリー・・・適当
・塩・・・少々
・油・・・じゃがいもが1/3~1/2ぐらい浸かるほど
カリーヴルストの手順
1.まず〈フライドポテト〉を作る。
じゃがいもは好きな大きさに切って水につける。僕はウェッジカットが好きなのでそうしました。
フライパンに油を注ぎ、水気を切ったじゃがいもを入れて弱めの中火にかける。
じゃがいもが色づいてきたらひっくり返し、箸なりつまようじを刺してスッと入るようになったら、火を弱め、セージやローズマリーを入れて香りが立ったらボウルなどにじゃがいもとハーブを引き上げる。熱いうちに塩少々を振っておく。
2.残った油のうち、小さじ2ぐらいを小さなフライパンかスキレットに入れ、包丁の腹で潰したにんにくを熱して香りが立つまで焦がさないように熱する。
その後、ソーセージを入れて炒め、ケチャップ、ウスターソースを入れて絡める。
スキレットのまま食べるなら、ソーセージを隅に寄せてフライドポテトを盛り付ける。ソーセージの上からカレー粉とオレガノをかけて完成。
「カレー粉」と一口に言いましても、そのまま食べられるカレー粉と「必ず加熱して食べてください」と書かれたカレー粉があります。焙煎・殺菌具合の違いでしょうか。
多くのレシピにはそんな注意書きありませんが、人口に膾炙している「S&B 赤缶カレー粉」がそのまま食べられるから何も書いてないのかもしれません。ぜひ一度、お持ちのカレー粉のビン・缶をチェックしてください。ちなみにこのレシピで使ったのはもちろん「S&B 赤缶カレー粉」です。
じゃがいもを揚げる際に余った油は、オイルパスタを炒めたり、オムレツを作ったり……洋食系に使える香り油となっているので捨てないで!
おわりに
カリーヴルストのいいところは、なんといっても簡単料理。最低でもケチャップかけてカレー粉かければ成り立ちます。年末年始、人が集まる時期の一皿にも、夏の食欲増進にもイケます。
とはいえ、ちょっと旨すぎますね。旨いに美味いを重ねているのですから、旨いが過剰になっている向きはあります。あくまでパーティメニューとして、ごくたまーに食べることにします。
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