Takumi Hasegawa

百汁百菜

0065 「欠けのないセカイ」

一人の紳士がヤッ とビルの上に躍り出て、手にしたステッキを振り回したら、空に浮かぶ三日月の欠けた部分がみるみるうちに光を湛え、すっかり満月になってしまった。それからというもの、月はいつも同じ顔を僕らに見せるようになった。 欠けなくなったのは...
百汁百菜

0064 懸けない、賭けない、けど飽きない

人生で一度だけ、パチスロをやったことがある。といっても、友達に連れてこられて、その友達の金で。他人の金だからというのもあったろうけど、全く感情が動かなかった。実に虚無の数分間。もしこれで僕の脳からドーパミンが出ていたらどうなっていただろう。...
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0063 声をかけるか、かけられるか

「いその〜野球やろうぜ〜」と、カツオはだいたい中島くんに誘われて遊びに出かけている(最近は学校で約束してきていることが多いかもしれない)。花沢不動産の前を通りかかったら、中から花沢さんが出てきてケーキでも食べないかと誘われ、カオリちゃん、早...
百汁百菜

0062 そういえば、ふりかけ食べてない

一汁一菜生活の中にあっても、なかなか食卓にのぼってこないのが「ふりかけ」である。ここでいうふりかけとは、海苔やおかか、ゴマ、そして玉子、鮭、わかめなどを乾燥させたご飯がススム、あれのことである。また自家製ではなく、買ってきたものの話をしたい...
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0061 無欠はドラマを生み出さない

月がいつも満ちていたら、誰も月に想いを託して歌など詠まなかっただろう。恒常、円満、具足、無欠……これらに「もののあはれ」は宿らない。 鈴木大拙は平安宮廷文学のこのようなところを、涙に濡れてばかりで骨がないと批判した。鈴木は仏教者だからこそ、...
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0060 生きるために「キル」する

家庭菜園をやるようになってからというもの、チョウやガを見ると「うっ」と身構えるようになり、ミミズを見ると親しみを抱くようになった。畑・家庭菜園におけるチョウやガ(以後、鱗翅目りんしもく)の幼虫はたいてい害虫であり、駆除の対象となる。一方で、...
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0059 七年間床屋に行っていない男

私信:季節の変わり目か、久しぶりにしっかり体調を崩してしまい、数日お休みしていましたが、徐々に再開していきます。一応これまで月〜金の週5回更新でやってきていましたが、これからは少し崩すこともあるかもしれません。  気づけば7年ぐらい、床屋に...
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0058 世界の切り方③:服が切り取る、僕らの身体

子どもの頃から学生時代にかけて、水泳が一番長く続いたスポーツであったが、そこで水着でいるのにすっかり慣れてしまい、人前で上裸でいることの恥ずかしさはあまりない。太っていた時期はさすがに嫌だとおもっていたが、また痩せたので、今でもたぶん平気だ...
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0057 世界の切り方②:自分のスクラップブック

僕は子どものころ、いい年頃になったら「なりたい自分カタログ」のようなものが自動的に編纂へんさんされていって、その通りに生きていくのかなとおもっていた。子どもの頃の夢なんてものは特になく、小学校で言わされた将来の夢は「野球選手」。でも、僕は野...
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0056 世界の切り方①:多数派/少数派の基準

大学のころ、僕は心理学を学んでいたのだが、そこで「社会」の最小単位が心理学と社会学では違うんだ、というようなことを聞いたことがある。心理学では、あなたとわたしの関係があれば「社会」が成立するので、「社会」の最小単位は2人であるとするが、一方...
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