「餃子の中身は自由だ」と言われても結局豚肉、にんにく、しょうが、そしてキャベツor白菜に落ち着く。
「カレーは自由だ」と言われても、結局肉、玉ねぎ、じゃがいも、にんじんに落ち着くように。
どれだけ雑誌で「本場中国では好きに餃子の中身を入れてます」と取り上げられ、さまざまなタネを供する餃子バル的な店があっても、家で作るとなれば、途端に冒険しなくなる、できなくなる。
家族の好き嫌いに合わせたり、変わった味を好まない人が一人でもいれば、家のメニューは保守的にならざるを得ない。
そう考えればうちは恵まれている。食べるものにいい意味で頓着しないからである。味噌汁の具は豆腐とわかめ以外認めないみたいな拘りを食卓に持ち込む人はいない。
餃子の保守性に関しては、「餃子の〜」を冠する中華チェーン店の餃子が、にんにくの多寡ぐらいしかバリエーションがないというのも影響しているだろう(あっても海老餃子で、それは蒸し餃子なり水餃子として供される)。
「あれが餃子というもの」と楕円の皿を重ねる度に思い込みが強化されていく……
では、家で夏に餃子を作りたくなったらどうする。キャベツも白菜も旬を外している。ならば冒険するしかなくなる。夏の餃子は冒険だ。キャベツも白菜もないことによって、冒険に繰り出さざるを得ない状況に追い込んだ上で、私は具にするための野菜を庭に採りに行った……
ナスとキュウリで餃子を作る

というわけで庭の畑から採ってきたのはナスとキュウリ、そしてバジル。またバジルかよ。1個前も2個前の記事もバジルの記事でした。詳しくはこちらとこちらの記事をご覧ください。虫に食われるからと植えまくったら必死こいて食べるはめに。
終わりかけのキュウリの最後の輝きを手に納めつつ、気温以外はもう秋なのになぁと、吹いてくる秋の匂いの風に二度と戻らぬであろう「涼しい9月」に思いを馳せました。
ナスとキュウリの爽やかな餃子の材料

・餃子の皮・・・通常サイズなら30枚ぐらい?
大判サイズなら20〜25枚ぐらい?
〈餃子のタネ〉
・ナス&きゅうり合わせて250gぐらい
→水を絞るのでかさは減ります
・脱水用の水・・・ひとつまみ
・豚ひき肉or鶏ひき肉・・・150g
・塩・・・・・・・・1.5g(肉の1%)
・しょうが・・・・・親指の先ぐらい(みじん切り)
・味噌・・・・・・・大さじ1強
・大葉orスイートバジル・・・いっぱい
・水餃子ならたっぷりの湯
・焼餃子ならサラダ油orごま油大さじ2〜
〈黒酢タレ〉
・黒酢・・・・好きなだけ
・ラー油・・・好きなだけ
〈レモンオリーブタレ〉
・オリーブオイル・・・・好きなだけ
・レモン汁・・・・・・・好きなだけ
・ブラックペッパー・・・好きなだけ
ナスとキュウリの爽やかな餃子の手順
1.ナスとキュウリは細かめのさいの目に切る。みじん切りまで行くと小さすぎます。ほどよく食感が残るように。このあと水気を絞るので、ある程度小さくなることを読んで切ります。
ナスは水に4〜5分浸けてアクを抜いたら、水気を切り、キュウリと同じボウルに入れて脱水用の塩を振る。水がボウルの底に溜まってくるまで2.を進めて待つ。


2.1.と別のボウルに豚ひき肉、塩、みじん切りにしたしょうがを入れて粘りが出るまでこねる。


1.のナスとキュウリの水気を絞りつつ豚ひき肉のボウルに加えていく。
大葉かスイートバジルをちぎって入れ、味噌を大さじ1強ぐらい入れたら、さらにこねる。


3.餃子の皮に包む。水餃子なら特に隙間のないように包む。

4.(水餃子)鍋にたっぷりの湯を沸かし、沸騰したら10個ぐらい入れる。
再沸騰して餃子が浮いてきて、皮に透明感が出てきたらだいたい完成。


※参考書籍:『dancyu』 2024年5月号「餃子の新星」プレジデント社
5.(焼餃子)フライパンに油を敷いて中火で熱し、餃子を並べる。餃子に焼き目がついてきたら水or湯を50ccぐらい(分量外)入れてフタをして焼く。
皮が透き通って中が見え、水気が飛んできたらフタを開け、完全に水気を飛ばす。さらにパリッとさせるなら追加で油を少し回して焼く。

6.タレの材料はそれぞれ好きなだけ器に入れて混ぜる。

皮が水餃子向きではなかったようで、デロデロになってしまいましたが、タレにくぐらせて口に運ぶと、さっぱりシャキッとツルツルと進みます。餃子のタネにしっかり食感があるのがこたえられません。

水餃子なら皮も作ったほうがいいかも。

水餃子向きの皮でないなら、と予定になかった焼餃子。でもこちらもなかなか優れて美味。
きゅうり炒めが好きな人にはたまらないのではないでしょうか。
キュウリがコキュっと歯触りよく爽やかながらも、味噌が醸し出す深いコク。これぞまさに「枯淡」な味わいに箸が進みます。

タレはどっちも合いますが、水餃子には黒酢、焼餃子にはレモンオリーブタレがおすすめです。
黒酢タレなら力強い風味を与えてくれ、さっぱりな水餃子と共に流し込めば愉悦。
バジルをより感じるのはやはりレモンオリーブタレ。酢コショウの延長ですね。
味噌で味付けしてるから、タレ側に塩分はいりません。
この餃子、実は冷めてもうまいです。
味がこなれるし、温かいきゅうりが苦手ならこっちのほうがいいかも?にんにくは入ってないので、焼いて弁当に入れてもいいかもしれません。
レシピとは何の関係もない空談

餃子はブログ向きではない。中身にどれだけ趣向を凝らしても、全部同じに見えるからである。
餃子を割って見せて写真を撮ってもいいが、べつに餃子の断面で中身を特定できるわけでもなく、目を凝らしてサムネを見て読む記事を選ぶ人などいないし、なにより割った餃子の中身はお世辞にもキレイとはいえない。なんだか人間みたいだな。ああ、そうか、餃子は人間だったんだ。
人間、中身なんてめちゃくちゃ汚い。その汚さを受容できずに苦しむ人をよく見てきたが、中身がかき混ぜられて固められた謎の物体でも、パクっと食ってみれば旨い、そんな餃子みたいなもんだと思えば、もっと人間のことを面白がれるのにな、と思う。
餃子はやはりベールに包まれたままが一番美しい。
そんな餃子の秘匿性にかえって興味を示しこの記事を読んでくれているあなたには、最大級の感謝を。
コメント