シチューをライスにかけるまでもなく、食卓にそれらが同時に並ぶだけでもNOを突きつける人がいる一方で、それらを取り合わせるだけでなく、シチューをライスにかけてしまっても全然平気な人もいる。
世間の皆が思っているよりはシチューかけライス、ないしは、シチューとライスを並べて一緒に食べても平気だという人は多いはずである。だが、蛇蝎のごとくシチューかけライスを嫌っている人の声は大きく、語気も強く、強い拒否反応をもって肯定派の意気を削いでしまっているようにおもえる。肯定派も肯定派で、正直ライスでなくてもいいような気もしていたり、カレーライスという大正義、汁かけメシ界の絶対王者が世にある中で、わざわざシチューかけライスがいいんだ、と魅力を語るのはむずかしく、否定派と肯定派の溝深く、溝を埋めようとしても徒労感があり、カレーライスにはひどく執着する一方で、シチューかけライスのほうは見放されているふしがある。
和洋折衷、神仏習合、和魂漢才などと、いろいろ混ぜたり、併存させてきた日本人のわりには、シチューとライスの組み合わせに対しては冷たいではないか。
シチューかけライスがダメな人は何がダメなのだろう。洋風のソースが白ごはんにかかるのがダメなのか、乳製品が白ごはんにかかるのがダメなのか、もう単純に色味がダメなのか、僕にはわからない。洋風ソースonライスダメ、乳製品onライスダメならば、ドリアだってダメなはずである。だが、ドリアならば食べる、という人はいるのではないか。あれは上にミートソースがかかるから別なんだ、とか、焼いた香ばしさがあるから大丈夫なんだ、というのだろう。そういう人は、結局シチューだからダメ、ということか。
シチューはごはんに合うように作られていないからダメだ、という人もいるだろう。だけど、ごはんの包容力はそれくらいのものであっただろうか。結局おかず味のものなら何でも日本人はごはんと一緒に食べてしまうのではないか。それに、たとえばエスビー食品の「とろけるシチュー」は「ごはんがおいしい!」とパッケージに大書されている(2026年5月現在)。「特製ブイヨン&野菜まるごとの旨み」と隠し味にあさりの出汁を加えているといい、HPでもこれらの要素によって「ごはんに合う」ことが強調され、もはやシチュー×ライスの専用設計になっているといえる。もしこのルウを使っている上で「シチューはごはんに合うように作られていない」というのであれば、それはもう意固地になっているだけだ。合わないものは合わない、と決め込んで籠城してしまっている。

↑ちなみに、かつては鶏白湯と醤油が隠し味となっていたはずだが、レシピの改訂があったようだ。
そもそも、「肉や野菜を具沢山にゆっくり煮込んだものはすべてシチュー」(稲田俊輔『ミニマル料理』p.45)であり、クリームシチューやビーフシチューだけがシチューではなく、もっと幅広い煮込み料理を指して「シチュー」というのである。汁が透き通っていたり、トマトが入ったりしていてもかまわないはずである。また、市販のルウを使わないと作れない、というのも思い込みで、バターなりの油脂で小麦粉を炒め、それをスープで伸ばしつつ、最後に牛乳を加えればクリームシチューになる。ということは、もっとシチューはごはんに合うようにいくらでも改造できるのである。なぜわざわざごはんに合わせるように作るのかって?ごはんが好きだからに決まっているだろう!それに、我が家にパンは常備されていない。シチューだからと、わざわざパンを買ってくるほど僕はマメじゃない。

というわけでできたのが、「春キャベツとたけのこのシチュー」である。家の畑で採れた春キャベツに、貰い物のたけのこをメインの野菜としつつ、肉は塩・砂糖3%のブライン液に漬け込んでおいた鶏むね肉で、芋枠はさつまいもにした。市販のルウは使わずに、玉ねぎをバターで炒めているところに小麦粉を振ってルウを作り(こうするとダマになって失敗する可能性がグッと減る)、野菜を炒めて煮込んだ。スープは市販のチキンブイヨン。隠し味に淡口醤油を加えて、ごはんに合うようにしている。また、ごはんは潰したにんにくとターメリックを入れたにんにくターメリックライスとし、色味に変化を与えた。白いごはんに白いシチューをかけるのが嫌ならば、ごはんを色づけてしまえばいい。ここは雑穀米などでもいいだろう。
以下、適当ではあるが、レシピを示す。
【材料(だいたい3〜4杯分)】
・油・バター・・・適当
・にんにく・しょうが・・・1片ずつぐらい
・玉ねぎ・・・・・1個
・小麦粉・・・・・大さじ1ぐらい?
・春キャベツ・・・・適当
・水煮たけのこ・・・適当
・さつまいも・・・・多すぎないぐらいに
適当に切ってレンチンしておく
〈好みで加える〉
・ぶなしめじ
・ブロッコリー
・鶏むね肉・・・1枚
〈ブライン液〉
・水・・・・200cc
・塩・・・・6g
・砂糖・・・6g
鶏むね肉を一晩浸けておく
・チキンブイヨンの素・・・1本
・水・・・・200〜300ccぐらい
・牛乳・・・200cc
・塩・・・・適当
・淡口醤油・・・鍋にふたまわしぐらい
1.フライパンに油・バターを熱し、潰したにんにく・千切りにしたしょうがを炒める。香りが立っきたら、薄切り(といっても、ちょっと分厚い)にした玉ねぎを入れ、塩をちょっと振って炒める。透き通ってきたら火を一旦弱めて小麦粉を振り、よく混ぜる。
2.ルウのように固まってきたら、ザク切りの春キャベツ、適当に切った水煮たけのこ、レンチンしたさつまいも、適当に塩を入れて炒め、よく馴染ませる。鶏むね肉は水気を切って炒め、表面の色が変わるまで炒めたら、水、チキンブイヨンの素を入れて15分ぐらい煮る。水の量は出来上がりのシャバシャバ度の好みで変える。
3.火を弱めて牛乳、淡口醤油を入れて沸騰させないように煮込み、味見をして足りなければ塩を振る。ごはんにかけて完成。
*****
にんにく・しょうがを入れてちょっとパンチが出るようにしたり、さつまいもが入っていたりして、若干シュクメルリ的文脈を乗せたシチューとなった。そういえばみんな松屋のシュクメルリは喜んで食べていたじゃないか!やっぱりシチューかけライス的なものが受け入れられる余地は十分にあるんじゃないだろうか。このシチューだって、クリームシチューだと黙っていたら、あんまりそんな感じのしないシチューになっている。名前がもたらす固定観念の力も感じてしまう一品となった。
関連百汁百菜
今回の一汁一菜

2026/04/24分
上記のシチューかけライス。思ったよりもガツガツスプーンが進んで、ついおかわりしてしまった。もちろん腹はパンパン。翌日にちょっと響いた。
参考文献
・稲田俊輔『ミニマル料理』柴田書店





コメント