0116 極力キャッシュレス主義

百汁百菜

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 巷ではなんでもスマートスマートと叫ばれて久しく、無駄な動作や装飾を省いて、気取らず、手早く、華麗にものごとを済ませるのが「デキる人」であるかのような評価を受けている。決済手段もこの例に漏れず、今さらカバンや懐からでっかい財布を取り出して支払うのは「スマートでなはい」とされている。男性が支払いの際に財布を取り出しただけで幻滅した、というような真偽不明の女性の意見がSNSを賑わせるなど、あらゆる所作においてスマートなものがよいとされる価値観は年々強化されていっている。
 まあ実際、財布の小銭を足りるかな〜とジャラジャラいわせているのはスマートではないかもしれない。また、財布の中に保険証、免許証、診察券などがパンパンに入っていたりすると様にならない。そこのところを、クレジットカードやスマホをピッとかざすだけで支払いを済ませてしまうのはいかにもスマートで、賢明で、合理的であるようにおもえる。
 別に僕はそのスマートさに惚れたわけではないが、極力キャッシュレスで支払いを済ませようとしている。現金払いでないと落ち着かない、という人は周りの同じ年頃の人(だいたい20代後半〜30代前半)でも見かけるけど、僕は学生時代からクレジットカードを作っていて積極的に利用していたから、キャッシュレスには元々抵抗はなかった。今では、基本的にスマートフォンのアプリと、カードが6枚入るだけの小さな財布に入れたクレジットカードのみで決済している。現金を使うのはもう本当に現金以外の決済手段がない店に限る。

 キャッシュレス化の波は都会だけでなく地方も覆い尽くしていて、地方に住んでいるからといって今でも現金が基本……というわけではない。地方住みであろうと、日常生活を送る分にはキャッシュレスで十分になっている。コンビニ、スーパー、チェーン店はもちろん、個人経営の雑貨店やパン屋なんかでも、今ではキャッシュレスOKになっていて、現金支払いのみとしているのは、一部の個人経営飲食店ぐらいである。だから日常生活において、ほとんど現金は必要としない。今では1000円札はみんな柴三郎に入れ替わったけど、あまりに使わなさすぎて、新札が出回り始めてもしばらく英世のままだったりもした。

 今出回っている決済手段を大きく4つに分けると、
1.現金
2.クレジットカード(タッチ含む)
3.QRコード・バーコード決済(paypayなど)
4.ICカード(交通系ICや店舗独自のプリペイド型)
といえるだろう。その他iDやクイックペイといった、非接触型の決済手段もあるが、これらはクレジットカードに付帯していることも多く、またクレジットカードのタッチ決済対応によって利用頻度が減っているであろうから、今回は省いた。
 チェーン展開するコンビニ、スーパー、飲食店などでは、これら全てが選びたい放題になっているけれど、個人経営の店だと、現金以外の3つのうち、どれかが抜けているケースが多い。たいてい「現金か、paypayか」もしくは「現金か、クレジットカードか(しかも一部ブランド)」になっている。
 こうした店舗ごとの違いに対応するためには、この4つの決済手段を網羅しておいたほうがいい。キャッシュレス決済を導入していたとしても、どれか一つの手段に依存してしまっていれば、それが使えなかったとき頭を抱えることになる。現金+贔屓のクレジットカードというようなものではもはや足りず、三重にも四重にも決済手段を用意し、散らしておくのが「スマート」である(もはやそれはスマートではない?確かにそうかもしれない)。
 僕は昔、paypayになんとなく抵抗があってずっと導入してこなかったけど、携帯回線を乗り換えたときにもらったポイントを使うために仕方なくインストールしたら、もう手放せなくなってしまった。「現金か、paypayか」の店は想像よりも多く、そうした店で現金を使わなくて済むようになって随分と快適になった。
 こうして決済手段を散らすと現れるのが、ポイントをできるだけたくさん得てトクをしたい、という気持ちだが、これはほどほどに抑えておいたほうがいいだろう。決済手段の多様化はすなわちポイント制度の多様化であり、各社、各サービスが競うようにおトクな還元を打ち出している。だけど、いついかなる場合でも最大の還元を得ようだなんて考えないほうがいい。もらえるポイント量が多かろうと、使い所がなければ意味がないし、うっかりしてポイントを取り逃したことに気づいただけでもストレスになってしまう。主軸となる贔屓の決済手段を2、3個用意して、多少還元率を損することになったとしても、よく使うポイントに集約するぐらいがちょうどいいのではないだろうか。そして、そんな決済手段を一挙に集めて便利に使えるステーション的な役割を果たすのが、iPhoneである。

 僕はiPhoneをちょっと贅沢な財布のように扱っていて、メインのスマホ(Android)を別に持ちながら、財布代わりとしてiPhoneを持ち歩いている。それはとにかくApple payが使いやすいからである。
 このApple payを使って手元のクレジットカードを連携させれば、とうとう物理的なクレジットカードすら必要なくなってしまうのだ。たまに残っている、カードを差し込まないと決済できないところもあるから、最低限のクレジットカードは持ち歩くけど、近頃のタッチ決済に対応したところでは、もはやiPhoneひとつで何枚ものクレジットカードの中から好きなものを取り出すことができる。交通系ICカードも連携させておけば、iPhoneひとつで公共交通機関にも乗れてしまう。Google payはこの使い勝手において、Appleの後塵を拝してしまっている。
 Apple payの使い勝手に味を占めた僕は、その他の決済アプリも全てiPhoneに集め、高級さではブランド財布に劣るかもしれないが、使い勝手は抜群の財布として使っている。さすがに財布代わりだけではもったいないから、音楽をダウンロードしたり、Apple watchと連携して運動と睡眠をモニタリングするのに使っているけれど。ちなみに、iPhoneのことは「財布」として脳が認識しているからか、iPhoneをダラダラ使うようなことはない。これはちょっと自分でも不思議なことである。
 Androidのスマホユーザーでも、中古のiPhoneでもいいから、財布代わりとして持っておくのは本当におすすめの使用法である。

 こうして普段は財布代わりのiPhoneと、小さな財布に入れたクレジットカードだけで基本的に決済をしている。現金のほか、溢れたカードや診察券などを入れるための長財布も一応持ち歩いているけど、それはもしものためのフェイルセーフに過ぎない。こっちには、だいたい5,000円ぐらいのお札と小銭をちょっとだけ入れている。もうちょっと入れておいたほうがいいのだろうけれど、今のところこれで困ったことはない。
 長財布はポケットに入れたくないので、持ち歩くのにカバンを使っているけど、それすらも手放して外出できればなんて身軽なのだろうとおもう。両手が空いて、肩にかかるものもない、まさに手ぶらな外出には憧れる。しかし、やっぱり災害などが起きた際には現金が必要になるかもしれないから、長財布を手放すことはできない。
 だから、手放せたら身軽になれるだろうと想像はするものの、実際のところ長財布を持たずに買い物に出るのはなんだか落ち着かない。今では近くのお出かけはおろか、旅行に行ったとしても、ほぼキャッシュレスで済ませることができているのにも関わらず、どうしても長財布は持っておきたいのだ。

 数え間違い、レジ締めの手間、盗難のおそれなど、現金を扱うことがリスクであると考え、とうとうキャッシュレスしか受け付けないという店や自販機も出てきた。これからいっそう現金の利用機会は減ってゆくだろう。お賽銭までキャッシュレスの時代だ。だけど、その辺の散歩ぐらいならまだしも(散歩ルートに店はほとんどないからそもそも金を使わない)、一銭も現金を持たずに「お出かけ」となると、まだ恐ろしいと考えてしまう。だから僕はいつまでも「極力」キャッシュレス主義でいる。

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