スリランカカレーのススメ
こんにちは。ハセガワタクミ(カルダモン26)です。
今回は私がどっぷりハマって作り続けている「スリランカカレー」をはじめとするスリランカ料理の特集です。
ハッキリ言って、スリランカカレーはインドカレーより日本人の口に合うと思います。
今回はその理由を探りながら、あなたをスリランカカレーの世界にご案内したいと思います。そんなスリランカカレーはこのような方におススメ。
こんなあなたにおススメ
・野菜をたっぷり食べたい方
・サラリともたれない食事を摂りたい方
・ココナッツが好きなあなた
・インドカレー(特に北インドカレー)がクドいと感じている方
・スパイスカレーに飽きた、もしくはその先に進みたい方
このうちのどれかに当てはまった方は、ぜひ最後までご覧ください。
スリランカについて
スリランカってどこ?
そもそものスリランカの位置は、インドの目と鼻の先。
インドのすぐ下にある島国です。
仏教国であり、米を主食とする(パンも食べる)点など、同じ島国として日本との共通点がいくつもあり、その極地といえるのが、かつお節を料理に用いること。
スリランカで使われているかつお節は「モルディブフィッシュ」といいます。
その旨みは私たちの舌によく馴染み、スリランカカレーがインドカレーよりも口に合う理由なのです。
スリランカの名産
スリランカはかつて「セイロン」と呼ばれていました。何か思い当たりませんでしょうか。
そう、「セイロンティー」。スリランカは紅茶の名産地で、皆さんもきっと一度はスリランカの紅茶を飲んだことがあるはず。なんてったって「午後の紅茶」にはセイロンティーが使われているんです!
⇒午後の紅茶 レギュラー商品
(キリン 午後の紅茶公式HP:https://www.kirin.co.jp/softdrink/gogo/regular/)
どうですか。一気に身近に感じられるようになってきたでしょう?
その他、スパイスもよく取れるスリランカ。特にシナモンが有名で、一般的に安価で流通する「カシアシナモン」よりも繊細で高級な「セイロンシナモン」は紅茶にもピッタリです。
スリランカが身近に感じられたところで、スリランカのカレーや料理の特徴を見ていきましょう。
スリランカ料理の特徴
現地のかつお節、「モルディブフィッシュ」
先ほども言ったように、スリランカでは「モルディブフィッシュ」というかつお節の一種を使います。
色んなレシピを眺めてきましたが、カレーに入れる……よりは野菜の和え物に加えたり、野菜のココナッツ煮の旨み出しに使われたりすることが多いでしょうか。
ココナッツミルクとかつお節が合わさった味わいは、エキゾチックながらも日本人の舌によく馴染む旨みが奥に感じられ、スリランカ料理をグッと身近なものにしてくれます。
そして、この味わいが日本の家庭料理とも非常にマッチしており、私が和食のエッセンスを加えたスリランカ料理を作り続ける理由になっています。
日本では厚削りのかつお節を刻んで代用できると紹介されることが多いですが、私は薄削りのかつお節を使うことが多いです。厚削りでかつお節の食感を感じたいか、薄削りで食材にしっかり絡むのがよいのか。ここは日本ですから、皆さんのお好みで選ぶのがよいと思います。
寝ても覚めてもココナッツ
スリランカではココナッツを割って削ることから一日が始まるというほど、ココナッツを料理に多用します。
ココナッツミルクだけでなく、ココナッツファイン、ココナッツオイルなど、スリランカ料理にココナッツは欠かせません。
ココナッツの自然な甘みは料理の味のバランスを整えてくれ、異国感あふれる香りは手軽に食卓を彩ります。野菜とココナッツファインの相性には目を見張るものがあり、和えるだけなのにこんなに野菜を美味しくできるものかと驚きました。
カレーありきの味わいではなく、これらのおかずだけでも、モリモリ食べられます。
そして、ココナッツミルクで煮込む野菜のほっこりする味わいも、見逃せないスリランカ料理の魅力。私はこれらの野菜のココナッツ煮込みを食べているときが一番「スリランカやな~」って思います。
※「スパイスカレーと野菜のおかず スリランカのまかないごはん」イカロス出版 - 石野明子(著) 掲載のレシピを作成
煮込んで作るから、クリアな味わい
スリランカカレーはインドカレーや、それをベースに発展した「スパイスカレー」とは違い、軽く炒めたら水、あるいはココナッツミルクで煮込んで作ることが多いです。
私が最初に見たスリランカカレーのレシピだと、油なしで煮込んでいたのでそれはもう、カルチャーショック甚だしかったのを覚えています。何と言ってもスパイスは油に香りが溶けることが多いですから、油を使わないなんて発想そのものがありませんでした。
と聞けば、一見不安になる作り方ですが、一度味わえば、そのスッキリとした美味しさに驚くはず。
クドさは全く感じられず、素材のクリアな味わいとサラリとした汁気で、どんどん軽やかに食べ進められます。カレーが腹にズシンと響くという方には特におススメ。
日本ならではのアレンジとして、かつおや昆布の出汁で煮込めば旨みもしっかり保障されます。
それに、熱心に玉ねぎやトマトの水分を飛ばす必要はないし、香りが特段劣るということもないから、私はすっかりその気楽さに魅入られてしまいました。
北インドカレーや日本のカレーとは対照的な、サラサラ感とクリアな味わいは食べ飽きることがなく、私はすっかり惹かれてしまいました。
ついつい食欲のタガが外れてしまい、食べすぎてしまうのが玉に瑕。
野菜をたくさん食べられる
スリランカの料理はとにかく野菜が美味しく、肉や魚のメインがなくとも食事が成り立ってしまうほど。
特に私が好んでいるのがスリランカ風野菜の油炒め「テルダーラ」。
空心菜やオクラ、ジャガイモ、ピーマンなど、見知った野菜でスリランカ料理が作れます。ポイントはトマトと玉ねぎ、そしてかつお節orその他魚介の干物の旨み。
これらとちょっとのスパイスを加えて野菜を炒めれば、ライス泥棒の出来上がり。汁気もあまりないですから、お弁当のおかずにもおススメです。
まだ試せていないスリランカの野菜料理もあるけれど、共通して感じられるのは、スリランカ料理は野菜を美味しく、そしてたくさん食べられる料理であることです。
とにかく辛い!
スリランカカレーはとにかく辛いです。
というのも、「辛さが旨さ」という価値観があり、辛味をきつくすることで美味しい料理が成立しているとのこと。
スリランカでは「サライラサイ」(サライ=辛い、ラサイ=旨い)
引用:世界の料理 NDISH 様 https://jp.ndish.com/world/srilanka/
すなわち、「辛さが旨さ」という言葉のように、辛味をきつくすることが美味しい料理が成立しています。
日本人にスリランカ現地の辛さは本当に辛くて辛いというので、私のレシピでは辛みを抑えています。「それでも辛い」と意見を頂戴したので、少量入れるところからお試しください。
「辛」がゲシュタルト崩壊したでしょう?
家庭ごとに味が変わる!?
「スパイスカレーと野菜のおかず スリランカのまかないごはん」の著者、石野明子さんによると、
本の中のほとんどは、我が家で働く料理上手な現地スタッフの家庭の味です。でも、これが「正解」ということはなく、スリランカのそれぞれの家庭の味、お店の味、全てが本当のスリランカ料理です。誰もが自分のレシピを持っていて、豆カレーだけで一冊本ができてしまうかもしれないくらい、実は奥が深いのがスリランカごはん。
「スパイスカレーと野菜のおかず スリランカのまかないごはん」イカロス出版 – 石野明子(著) p2. はじめに より引用
とのこと。同じ名前の料理でも、それぞれ家庭の味があり、辛さの違いがあり、それぞれのコツがあって……
それらバラツキのある家庭の味を「全て正解」としてしまう、スリランカ料理の懐の深さにも私は感銘を受けました。失敗する余裕が社会にないからか、日本人的気質から来るのか、何かと正解ばかり追い求める今の世の中、スリランカ料理はそんな窮屈さから解放してくれる心地のよさを感じるのです。
もちろん、スリランカ料理へのリスペクトは忘れずにいたいものですが、日本人なりのスリランカ料理を考えていくことで、少しでもスリランカ料理が持つ懐の深さを広めてゆきたいと思っています。
↓そんなスリランカのカレーとおかずのレシピをまとめました
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さて、スリランカのカレーや料理の特徴はまだまだあると思いますが、日本にいながら作ってみて分かった大まかな特徴はこのあたりでしょうか。一旦ここでまとめます。
スリランカカレーの(大まかな)特徴 1.モルディブフィッシュとかつお節に共通する「うまみ成分」が日本人の舌に合う! 2.ココナッツをとにかく使う!コクと甘みを手軽に加えられます。 3.ちょっと炒めたら、あとは煮込むだけのカレーが多く、比較的簡単に作れる! そして、毎日でも食べられるようなスッキリと飽きのこない味に仕上がります。 4.野菜を美味しく食べられる料理が多い!野菜料理とライスだけでも食事が成り立つことも。 5.とにかく辛い!けど、ここは日本なので好みで調整してね。 6.家庭ごとに味が違う!から、あなただけの味を見つけましょう。
ここまでご覧になってくださった方ならもうお分かりかもしれませんが、スリランカカレーとインドカレーは日本において同じ「カレー」の名を冠しながらも異なるつくりをしています。
インドカレーとの違い
どこぞの動画レシピメディアでは「インドのカレーはホールスパイスを使うのに対し、スリランカカレーはパウダースパイスを使います」なんて解説がされていますが、それはさすがにざっくりすぎます。そのほかの部分は割とまともだったのにどうしてそこが差別化点だと思ったのか……
インドではパウダースパイスは使わないのか?スリランカではホールスパイスは使わないのか?それらはいずれもNO。
インドにも大きく分けて北と南、それぞれのカレーがあるのです。ここではそれぞれのカレーとの比較をしていきます。
インドカレーといっても大きく分けて2つ
皆さんは「インドカレー」と聞けば、どんなカレーを思い浮かべますか?
バターチキンカレーがあって、ナンがあって、よく分からないけど旨いドレッシングがかかったサラダがあって……
多分こんな感じかな?と勝手に想像。
おそらくそれはインドカレーの中でも「北インドカレー」。日本で多いのは、ネパール人の方が開いた所謂「インネパ」カレー店でこんなイメージ通りのカレーが供されています。
北インドカレーはごってり多め
北インドは寒いというものあり、ごってり脂肪分のある動物の乳や肉を使ったカレーが多い傾向。ココナッツミルクを使ったカレーもごってりして見えますが、いざ食べてみるとココナッツミルクは存外スッキリした味わいなんです。だから、暑い気候の中でよく食べられている。
閑話休題。北インドカレーはもったり感があるから、ドロッとしたルーのカレーがメインの日本において受け入れやすかったのでしょう。未だに私の親戚には「シャバシャバはカレーじゃない」とルーカレー強硬派がいるぐらいです。あとはもう、稲田俊輔さんの言う通り、「バターでチキンでカレー」。旨いに決まっているという話ですね。
作り方としても具材をサッと炒めて終わりなスリランカと比べ、皆さんもよく知る「スパイスカレー」の作り方が中心です。ホールスパイスをテンパリングして、玉ねぎとトマトをしっかり炒め、脱水して旨みを凝縮するからとにかくリッチな味わい。
私としては、北インドカレーは「たまに食べるのが丁度いい」カレー。日常食としてはちょっとクドさを感じます。
スリランカカレーはそれと対照的に「日常食として普段から食べられる料理」だと私は考えています。
南インドとは共通する部分もある
こんな風に北インドカレーとスリランカカレーは分かりやすい違いがあるのですが、一方の南インドカレーはどうでしょう。「そもそも南インドカレーを知っていますか?」という問題ですが、最近は〈エリックサウス〉を筆頭に、日本でも南インドカレーを提供するお店が出てきたので、情報に敏感な方はもう知っていることでしょう。
南インドは暑いのでサラッとしたカレーを米と共に食べます。辛みのほかに酸味が効いているのが多く、汗をかいて身体を冷ましたり、減退しがちな食欲を刺激する味わいが特徴。そんな南インドカレーは、スリランカと地理的に近いこともあり、共通点が多くあります。
米中心で、カレーリーフやココナッツを多用して、モルディブフィッシュも使うし、魚のカレーも食べるし、タマリンドの酸味を効かせることもあります。モノによりますが、魚のカレーのレシピは割と似ている部分を感じます。
また、南インドにはライスを中心に様々なカレーや副菜を並べる「ミールス」という食事があります。
スリランカではライスを中心にいろんなカレーや副菜を載せて食べます。
ううむ、日本人目線ではよく似ているように見えます。そこからさらに深掘ってみると、以下のような違いがあるのではないかと思います。
・南インドでは豆をテンパリングして香りを引き出すことがある
また、最初だけでなく、仕上げにもスパイス・豆をテンパリングした油を加え、フレッシュな香りを楽しむ傾向にある
・スリランカのスパイス使いはシンプル。インドカレーのように何種類も加えないし、量も少ない
また、「トゥナパハ」というカレー粉を用いることが多い(レシピ本では単純にカレーパウダーと呼ばれることも)
・スリランカは1つの料理を1つのメイン食材で仕上げる傾向があるが、南インドではサンバルやアヴィヤルをはじめとする複数の食材で仕上げる料理がある
・南インド料理はスリランカ料理と比して複雑な味と香りを持つ
スリランカ料理はシンプルで素材の味が表に立つ
すみません、私は南インドカレーに疎いのでこれぐらいしか浮かびませんでしたが、違いはお分かりいただけたでしょうか。ただ、スリランカにはインドにルーツを持つ人が住む地域があるようで、互いの料理が混じっているものもある様子。今後より一層深掘りしていきたいものです。
実際に作りたくなったら
基本的とスリランカとインドで大きく使うスパイスが変わることはありません。
なので、すでにお持ちのスパイスの多くをスリランカ料理にも使うことができ、新たに買い足すものといえば、カレーリーフ、パンダンリーフ(ランペ)やゴラカあたりでしょうか。
といっても、なくても作れるレシピはたくさんあります。特にゴラカは梅干しや黒酢で代用できる部分もあります。このあたりは香取薫さんの著書「家庭で作れるスリランカのカレーとスパイス料理」が詳しいです。
ほかには、ココナッツファイン(フレーク)があれば捗ります。製菓売り場に売っているもので◎
こだわるなら、スリランカのミックススパイス、「トゥナパハ」も用意することになりますが、これは市販のカレー粉やガラムマサラである程度代用できるほか、自分で作ることもできます。
トゥナパハを作る
ざっと写真に写っているスパイスがあればトゥナパハは作れます。
詳細なレシピは香取薫さんの著書「家庭で作れるスリランカのカレーとスパイス料理」をご覧ください。
上のスパイスを広げた写真右側にカレーリーフとパンダンリーフが写っていますが、これらは乾燥のもの。香りが弱まっており、特にパンダンリーフはカレーに入れたときの効果がほとんどありません……。一方、カレーリーフは雰囲気を感じ取れるぐらいには香ります。
トゥナパハを作るには乾燥しているものが扱いやすいので、私はここで使っています。
香りは突き抜ける爽快感が特徴。シナモンやクローブ由来の甘い香りがそれを支えます。
あらゆるスリランカ料理に使われるので、たっぷり作っておくのが吉。
とはいえふるいにかけるのも掃除も大変だしということで、下のような商品を買うこともできます。
スリランカ料理をもっと知る
このブログでは、スリランカ料理のレシピを更新中です。
元々日本人の口に合うスリランカ料理ですが、ちょっとクセがあると思われるものは日本人向け(というより、自分向け)に調整したレシピを紹介しているので、スリランカ料理への入り口として作っていただければ嬉しいです。
↓特集記事では、スリランカカレーとおかず・副菜のレシピをまとめました。
↓スリランカ料理に興味を持ったら、まず読んでほしい本についてまとめました。
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スパイスカレーを出すお店では結構スリランカカレーがベースになっていたりするのですが、まだまだ一般層には知られていないスリランカカレーの世界。共に研究する仲間になっていただけないでしょうか。
ここまでご覧いただきありがとうございます。
参考書籍
・「家庭で作れる スリランカのカレーとスパイス料理」河出書房新社 – 香取薫(著)
・「スパイスカレーと野菜のおかず スリランカのまかないごはん」イカロス出版 – 石野明子(著)
・「dancyu」2021年8月号「スパイスとカレー。2021」プレジデント社
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